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お水

ペンネーム:お花さん


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飲食店で起きた出来事です。夜の忙しい時刻に一組の家族連れがやってきました。中年の夫婦に十二、十三くらいの年の娘さんの三人連れです。中年夫婦はお互いに明るく話をしており、丁度その夫婦の真ん中にたたずんでいる少女もまたにこやかな表情をしていました。どこからどう見ても、仲の良いご家族でした。

席に案内し、水を持って行くと、少女の姿がありません。私はトイレにでも行ったのかなと、勝手に納得していました。お盆に載せた水を三つ机の上に置くと、夫婦は怪訝な顔をして、
「二人なんですけど」
と言いました。

私は驚きつつも、申し訳ないと謝りながら、水を下げました。おかしなこともあるなと思いつつ、私は厨房へ向います。すると、すぐ耳元で、
「私もお水」
と胸の詰まるような悲しげな声が響きました。

すぐに振り向きましたが誰もいません。それどころか、お客さん同士の話し声がうるさいくらいでしたので、そんなか細い声が聞こえるはずがないのです。 いま思い返せば、あの女の子はお店に入ってきたときから、線が薄く消え入るような印象を私に与えていました。あの幽霊が夫婦に憑いていたのか、お店に憑いていたのか、アルバイトをやめてしまったいまでは、もうわかりません。

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