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車道に潜む影法師

ペンネーム:ぎんさん


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車道を挟んで向こう側にコンビニがある。その店は交通量の多い道に隣接している。そのためか、そこにはいつもたくさんのドライバーが休憩のために車を止めいて、賑やかなところだった。ドライバーは、車の中で仮眠をとっていたり、店の前でたばこを吹かしていたり、思い思いのやり方で休息している。

そこにひとりのおそらく、男がいる。おそらくと書いたのは、その人物は影のように全身真っ黒で、身なりがよくわからないからだ。背の高さや、肩幅の広さから、私は男だろうと思っている。

私はこの道を帰り道にしているので、嫌でもそのコンビニが目に入る。そのたびにあの男を見かける。いつも同じ時間に、同じ場所で、置き忘れられた置物のようにボーっと突っ立っているのだ。最近になってわかったことだが、どうやら小刻みに左右に揺れているらしい。私はその様子を、
「ああ、今日も居るな」
程度に眺めていた。

ある日、いつものように私がそのコンビニの前を通りかかると、やはりあの男が立っている。しかしどこかいつもとちがう気がした。歩きながら横目に彼を観察していて、気がついた。今日はコンビニの入口にたたずんでいないのだ。少し車道側に近づいている。店から少し離れたばかりに、照明が当たらない場所まで来ていた。おかげで、ただでさえ影法師のようなのに、なおさら暗闇に輪郭を飲まれてしまって、彼のシルエットの境界は曖昧になっていた。

翌日、やはりいつもの道を私が歩いていると、コンビニの前に男はいなかった。私がこの道を通い続けて始めてのことだ。不気味な人物であったので、いないというだけで内心ホッとした。私がコンビニから目を離そうとしたとき、車道の車線と車線の間にある植え込みの辺りに妙な影を見た。私は歩みを止めて、植え込みを見据える。その時、一台のトラックが私の前を通り過ぎた。その一瞬に、ライトの明かりが植え込みと私の間を昼間のように照らし出し、去っていく。植え込みの辺りが、パッと明るくなった際、左右に揺れる小刻みな影を私は見た。居た。あの男だ。

男は私のうしろから走ってくる車に轢かれながらもなお、平気な様子で、私の元へ近づいてきている。まさか男がこの世の者ではないとは思っていなかった私は、ここで初めて戦慄を覚えた。

踵を返しこの場を立ち去ろうとすると、またもやうしろから一台の乗用車が明かりをこちらへ向けながら、通りすぎた。車のライトが一杯に私の目の前を照らし出したとき、私の目の前に左右に揺れる影が居た。

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