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曲がり角に立つ女

ペンネーム:オレンジさん


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星空を見ようと展望台へ車を走らせていたときの話です。展望台へと続くその道は、夜中というのもあり、対向車が全くありませんでした。急なカーブに差しかかると、ヘッドライトに女の人が浮び上がりました。こんな時間にひとりでぽつんと立っているのも不思議でしたが、もっと妙だったのは服装でした。

昭和――大正時代を連想させるような、古ぼけた着物を着ています。腕は力なくだらりと降ろしており、着物の裾から覗く血の気の失せた手も、力なく揺れています。ですが、この時は、気持の悪い人が居るな程度に思っていました。

いざ、着物の女の人を抜き去る瞬間、彼女の顔にライトが当たりました。それを見たと同時に、心臓が跳ね上がりました。着物の女の人は長い髪をふり乱し、うつむいていたため表情はよくわかりません。しかし不気味だったのはそれではなくて、首の角度でした。

うつむいているので、首が前へ下るのは当りまえです。が、女の人の首は、まるで骨が折れてしまっているかのように、九十度に傾いているのです。

私はルームミラーでもう一度女の人を見返しました。やはり、身じろぎひとつせずに、異様に傾いた首を称えたまま、じっとそこに立っています。何ともいえず気持ちの悪い光景でした。

しばらく行くと、またカーブに差しかかりました。そしてカーブを曲がり切るか切らないかというところで、またもやあの女の人が立っています。私は危うく叫び声を上げてしまいそうでした。人間が車を追い抜いて先回りできるはずがありません。この世の者ではない。そう直感しました。

結局、その女の人は展望台へたどり着くまでカーブを曲がる度に、現われました。幸い展望台にはたくさんの人がおり、あの女の人も現われなかったので胸をなで下ろしました。こわかったのは帰り道でしたが、心配は杞憂に終わり、何事もありませんでした。あの女の人はあそこで何を待っていたのか、いまでも不思議でなりません。

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