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雨の来訪者

ペンネーム:シュールさん


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その日は、朝から雨だった。ただでさえ暗い玄関ホールは、雨雲のせいでいつもよりもっと薄暗くなっていた。受付に座る私の前を傘を持ったお客様が何人も通りすぎていく。
「こんにちは」
また、2人お客様が入ってきた。

お客様は軽く私に会釈をすると、エレベーターへ向かう。その2人から少し間隔を置いてまた別のお客様が3人入ってきた。声をかけようと、その3人に向き直る。一瞬唖然とした。頭から足の先までぐっしょり濡れた3人が入ってきたためである。こんなにすごい雨だというのに、傘を持っていない。髪や服から雫がポタリポタリと滴っていた。

3人が私の目の前を通り過ぎる瞬間にやっと私は、
「こんにちは」
と挨拶したのである。

3人はこちらを見ることもなく、かすかに顎を引いただけだった。会釈の代わりなのだろう。――チン。エレベーターの来た音がした。最初の2人連れのお客様が、エレベーターに乗る。私はあの3人のお客様も一緒にエレベーターに乗るのかなと、視線を3人に戻す。誰もいない。当然、玄関ホールに人が隠れられる場所はない。

一体、このほんの数秒の間に、あの3人はどこへ消えたのだろう。背筋に冷たいものが走った。エレベーターのドアが閉まる音がしたので、そちらを見る。ドアが閉まるわずかな時間。最初の2人連れのお客様のうしろに、先ほどの3人が雨粒を滴られせながら立っていた。

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