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倉庫の住人

ペンネーム:夜勤さん


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職場に倉庫がある。倉庫と言っても元々は、なにかの部屋だったところを仕切って作った狭い場所だ。その倉庫のドアは、どこかおかしい。横にスライドさせて開け閉めするドアには、ストッパーが付いている。これは普段からドアを開けっ放しにできるようにしているためなのだが、気がつくといつもドアが閉まっている。

最初はストッパーが壊れているのではないかと思ったのだが、どうもそうではないらしい。同僚にドアを閉めたか尋ねても、返ってくる言葉はいつも同じ。誰も倉庫のドアを閉めていないのだ。ストッパーも壊れていない。ならば、ドアが閉まるはずないのだが、いくら気をつけていてもドアは自然と閉まっている。

ある日の夜勤。私は今日こそは倉庫のドアが閉まる理由を突き止めてやろうと、仕事もそこそこにドアの前に陣取っていた。社員は皆帰宅してしまい、残っているのは私だけ。遠くから虫の鳴き声が聞こえてくるだけで、なんの物音もしない夜だった。

私はいつドアが閉まってもいいように、ドアをじっと見つめていたのだが、さすがに10分もすれば飽きる。一応、ドアを気にしつつも、残っている仕事をさばき始めた。それから20分ぐらいが過ぎた頃、ふと倉庫のドアを見ると、なんとドアが閉まっている。ドアの閉まる鈍い音すら気づかなかった。これにはすっかり面食らってしまった。

私は立ち上がると、ドアを全開にし、ストッパーをかける。念のため倉庫の中も覗きこんだが、誰もいない。妙なこともあるものだ。私は自分の席に戻ろうと倉庫ドアに背を向ける。

――と、背後からカラカラと倉庫ドアの乾いたタイヤの音が聞こえてきた。慌てて振り返り、閉まりかけていた倉庫ドアを止める。ストッパーはと目をやると、なぜか外れていた。
こんなバカな!

私は恐怖よりも苛立ちを覚えた。てっきりドアに欠陥があると思ったためだった。私は苛立ち任せに、思い切りドアを引き、倉庫の入り口をいっぱいに広げた。ドアがガンっと鈍い音を響かせる。屈みこんでドアにストッパーをかけ、立ち上がった。

目の前に真っ赤な玉が2つ。いや、玉なんかではない。目だ。健康な人間とはとても思えないほどの真っ赤な目を持った男と、私はもろに目を合わせてしまった。男は私から視線を外さずに、おもむろに左手で倉庫のドアノブつかんだ。

そして、さっき私がやったように力任せにドアを引き、倉庫の入り口を閉ざした。その日、私はどうやって家に帰ったかよく覚えていない。不思議な事に、この出来事があって以来、誰も倉庫のドアを開けなくなった。ドアのうしろにいつもその男が立っているからだ。

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