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前にいる

ペンネーム:きんさん


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その日は、車で家族旅行をしていました。運転をしていたのは主人で、後ろの席には子供がいます。丁度、車は山の道を走っていたので、次第に坂が急になっていき、カーブも増えてきました。

次のカーブを曲がり道が開けたときです。前方に、まるで平安時代のお姫様のような格好をした女性と、そのお付きのような人たちが歩いていました。
(……あの人たち、何してるんだろう……)
最初は不審に思っていたのですが、この近くに遺跡の跡があることを思い出し、その宣伝であんなことをやっているんだと思いました。
(そうか、宣伝か大変だなあ)
車が、次第にそのお姫様一行に追いつき――追い抜きました。

車はそのままお姫様たちを追い抜くと、トンネルに入り、しばらく外が薄暗くなります。そしてトンネルを抜けると、また前方に人が集団で歩いています。車が、だんだんその集団に近づいていくに従って、私は恐怖を覚えました。先程、車で追い抜いたお姫様の一行が、また前にいるのです。また、車がだんだんその一行に近づいていき――追い抜きます。すると、また前方にいるのです。その山には二度と近づいていません。

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