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幽霊が巣くうマンション

ペンネーム:みつさん


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それは、そのマンションに引っ越してからすぐに起こった。元々、霊感と呼べるかはわからないが、そういったものの勘が良かった私は、このマンションを下見に来たときから、ああ、何か嫌だなぁとは、感じていたが、そのマンションの家賃の低さにつわれる形で、そこに入居することに決めたのだった。

荷物を運び込んで一段落ついたころ、私は改めて部屋の中を見回してみたが、何か暗い。それは照明が暗いとか、日が当たらないとか、そういう物理的な暗さでは無く、とにかく、上手く説明できないが雰囲気が暗い。重いと言い換えても良いかもしれない。

さらに、その重苦しい空気はマンションだけに漂っている訳では無く、マンションの近隣まで重苦しい雰囲気が漂っているのだ。私は今更ながらそんな現状に気付いたが、まあ、仕方が無いと腹を決めていた。ところが、ここにいる者たちはそうそう一筋縄ではいかなかった……

私が引っ越し初日、部屋の掃除を始めたときに、早くもそれは現れた。何かの影がスーッとカーテン越しに映ったのだ。もちろん、窓の外に人などいなかった。また、しばらくしてから、夜、買い物から帰ってきてマンションのロビーに誰も居ないはずなのに、影がよぎったりもした。

不気味ではあったが、引っ越したばかりだったこともあって、また、引っ越しをする気にはなれず、そのまま気にしないようにして過ごしていた。そして、マンションの奇妙な出来事に慣れたころ、引っ越しを決める決定的なことが起きた。

それは、風呂掃除をしていたときのことだった、いつも綺麗に掃除をして使っていたのだが、その日、急に排水構が詰まったのだ。
おかしいな、昨日も掃除をしたはずなのに?
私は不思議に思いながらも、排水構を開けてみた。

見た感じでは、特にコレといった排水構を詰まらせるような物は無いように見えた。私は排水構の奥に手を伸ばした。
何にも無いのかな?
その時だった、何かが指にザワっと触れた。
うん?何だろう?
私はそれをグッと掴むとゆっくりと引っ張り出そうとした。

徐々に、排水構から手が出てきて、その掴んだ物が見えてきた。
――髪の毛だ。
何だ、ただの髪の毛か、しかしおかしいな、昨日、頭なんか洗ってないし、それに掃除だってしたのに、何でこんな物が詰まってるんだ?
私は不思議に思いながらも、その髪の毛を全部引っ張り出した。

私はそれを見て驚愕した。長い長い、女の髪の毛だったのだ。それは明らかに自分の物とは違う髪の毛で、それが、両手一杯の束になって、排水構を詰まらせていたのだ。私は恐ろしくなり、風呂場から逃げるようにしてリビングに来たときだった。

本当にほんの一瞬のことではあったが、長い髪の女が横を向いて立っているのが見えた。そして、その女はスーッとカーテンの前を滑るように移動しながら消えていった。私が何より怖かったことは、その女が移動したとき風も無いのにカーテンが波を打って動いているのに気付いたことだった。

そして、さすがにこの事件が起きて私は引っ越しを決めました。たまに、そのマンションの前を通ることがあるのですが、思うのです。今だにあの女はあの部屋で住人をジッと観察しているのかと……

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