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そして、女は消え失せた

ペンネーム:パパさん


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ある日、私は社用で外へ出ていた。用事を済ませ、会社に戻る途中に横断歩道がある。人通りも多く、私のようなサラリーマンも多くいた。横断歩道の信号が赤になり、私は信号機の下で止まった。

横断歩道の向こう側へ目をやると、ひとりの女性が目に付いた。スーツを着ている人が多い中で、ひとりだけ真っ白なワンピース。あきらかに場違いだ。透き通るように肌の白い女性だった。私の視線に気づいたのだろうか、彼女は私を見て、口元に笑みを浮かべた。私も思わず、口元を緩めた。

しかし、次の瞬間、私の笑みは消えた。彼女は赤信号だというのに、突然、横断歩道を渡り始めたからだ。角を曲がってきたトラックが彼女に迫る。
(危ない!!)
その瞬間のことは忘れられない。女はまるでボールか何かのように、勢いよく吹っ飛んだ。空中で両腕を伸ばして、鳥が羽ばたくように、バタバタと腕を振り回すと、女は地面に叩きつけられた。

私は危うく叫びだすところだった。周りで悲鳴が湧き起こるだろうと思っていたが、それは一向に起きなかった。誰も声を発しない。あまりのことに初めは皆、声を出せないでいるのかと思ったのだが、そうではないらしい。トラックは何事もなく通り過ぎた。無論、道路に血の跡もない。そして、女は消え失せた。

(今のは一体?)
信号が変わった。私は白昼夢を見たのだと思い、信号を渡ろうとしたが、引き返した。信号を渡った向こう側に、白いワンピースが揺れた気がしたからだ。

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