TOP > 実話恐怖体験談目次 > 笑い声

笑い声

ペンネーム:ムーンさん


  このエントリーをはてなブックマークに追加

ひさしぶりに家族で旅行にでかけたときのことです。行き先はある温泉地。私と子供はひさびさの旅行に高揚し、楽しい旅行になるはずでした。朝、昼は車で観光地をあっちこっち巡りました。時間はあっという間に過ぎていきました。

夕方、もう日も暮れて、夜になるか、ならないかという時間帯に宿泊予定の旅館に着きました。まだ当時はできたばかりの旅館で、内装もとてもきれいで、部屋に行くのが楽しみでした。部屋に案内され、入ったとき、なぜか部屋の雰囲気が重苦しく感じました。照明が部屋を明るく照らしているはずなのに、霧がかかったかのように、かすんで見えます。ただ、皆が楽しそうにしているのにそんなことを言ってはぶち壊しになると思い、なに食わぬ顔をして、そのことは言いませんでした。

しばらく、家族で談笑をしていたのですが、急に私は具合が悪くなってしまい、私は横になることにしました。子供がお風呂に行こうと言ってきたのですが、とても起き上がることができず、夫に子供をお願いし、先に行ってきてもらうことにしました。しばらく、そのまま眠っていたのですが、ふと目が覚めました。人の気配を感じたからです。
「早かったね。お風呂どうだった?」
声をかけましたが、返事がありません。おかしいなと思い上半身だけを起こすと、部屋には誰もいません。人が入ってきたような雰囲気もなく、変だなと思いながらも、また横になりました。眠るでもなく、しばらくは天井を見つめていました。体勢を整えようと、寝返りを打ったそのときです。

私と同じように横になった女がこっちをジーっ見ています。女と私との間はほとんどなく、女の息遣いが聞こえてくるようでした。女はときおり、
「ふふ……ふふふふふ……」
と微笑んでいました。私は恐怖で身をよじることも、視線を逸らすこともできません。

青白い顔が不気味にこっちを見ています。顔の血管がいやに浮き出ていて、気持ちが悪く、充血しきった目は唇の笑みとは対照的に、殺気に満ちていました。女からは焦げた生肉のような、悪臭が漂っていて、私は顔をしかめました。それと呼応するかのように、女の表情が……いや、顔が徐々に変形し始めました。

青白い顔は赤みを帯び始め、徐々にどす黒く変わっていきます。顔に浮き出た血管が、グツグツと地獄の池のように煮えたぎるような音が響きます。そして、顔全体がどす黒く変色すると、突然額からベロッと皮膚がむけ始めました。私はそれを直視できず、心の中で叫び声を上げると、やっと体が動き女とは反対方向へ体をよじりましたが、そこにも男の霊が、先ほどの女同様こっちをジーっと冷たい眼差しで、眺めていました。私はそれを見て、急いで布団から這い出ました。

その後、家族が戻ってきましたが、そのときにはもう男女の幽霊はいませんでした。家族にもこのことは言えませんでした。しかし、夜になっても姿こそ現しませんでしたが、女の笑い声が一晩中、私の耳元や部屋中からこだましていました。一体、この部屋でなにが起きたのか、今でも不思議でなりません。

【実話恐怖体験談募集】あなたの実話恐怖体験談をお待ちしています。
実話恐怖体験談募集要項
実話恐怖体験談を投稿する

↑このページのトップへ