TOP > 実話恐怖体験談目次 > 三面鏡に映る影

三面鏡に映る影

ペンネーム:さっちゃんさん


  このエントリーをはてなブックマークに追加

幼い頃の話だ。私の家には和室があった。普段から、あまり使われることがない場所だった。暗くて、ほこりまみれで、誰も手入などしていない。そんな和室の隅に三面鏡がある。古いもので、母の嫁入り道具だったらしい。不思議なことに、三面鏡の観音開きの戸は、いつも右側だけ開いてある。私がいくら閉めても、なぜか気がつくと、開いている。不気味ではあったが、母が鏡を使ったあとに閉め忘れているんだと、勝手に納得していた。

ある日、私はその三面鏡の前で足の爪を切っていた。何でそんなうす暗く、居心地の悪いとこで爪を切ることにしたのか、理由は覚えていない。例によって、三面鏡の右の戸は開き、鏡の向こうの自分が私を覗き込んでいるだけだった。

どれくらいか、時が経った。ふと人の気配を感じる。何だろう、私はうしろを振り返る。しかし、誰もいない。ほこりにまみれた、洋服ダンスが立ちすくんでいるだけだ。おかしい。たしかに、人の視線があったのに。私は気にしないことにして、再び爪の手入を続ける。しばらくすると、また視線が。うしろを振り返る。何も無い。

変だなと前を向いたその時、それは居た。三面鏡に私が映っている。そのうしろに、見たこと無い、がたいの良い男の黒い影が私を見下ろしていた。私は固まってしまい、動けない――いや、爪きりを持った、右腕だけが動いた。しかし、それは私の意志ではない。何者かに右腕をつかまれ、無理矢理動かされているような、とにかく右腕だけが私の意志に反して、動く。

右腕は勝手に、私の足の爪に伸びる。気づいたときには、遅かった。これも不思議なことだが、右腕が勝手に切り落とした足の爪が、いきなり飛び上がって、目の中に入ったのだ。爪を切ると、爪が飛ぶことはままある。が、この場合は、真っ直ぐ私の目を目掛けて、普通ではあり得ない動きをして飛び込んで来た。私は爪の入った右目を反射的に抑えた。すぐに、取り除かなくては。そう思い、立ち上がる。

私は和室をあとにした。そして、もう二度とその三面鏡の前に座ることはなかった。幸い爪は無事取り除くことができ、目に異常もなかった。あの時、最後に私が、三面鏡の中を覗いたあの時、黒い男は右目から血の涙を流していた。

【実話恐怖体験談募集】あなたの実話恐怖体験談をお待ちしています。
実話恐怖体験談募集要項
実話恐怖体験談を投稿する

↑このページのトップへ