TOP > 実話恐怖体験談目次 > 武将が浸かる温泉

武将が浸かる温泉

ペンネーム:フォーリーフさん


  このエントリーをはてなブックマークに追加

家族である温泉へ出かけたときの話です。男湯、女湯に別れて温泉へ向うと、ラッキーなことに私の他に客はひとりもいませんでした。温泉の一番奥まったところに、洞窟風呂というものがあります。私はそこに向いました。

中はドーム状の空間になっていて、電灯がチラホラとついていました。一番奥まで進んで湯に浸かったのですが、違和感を覚えました。お湯は温かかったのですが、なぜか空気がヒンヤリとしていました。はてなと思い、周りを見渡してみても、空調のような物は見当たらず、おかしいなと思っていました。

違和感を覚えながらも、しばらく湯に浸かっていると、湯気と湯気の合間に人影があることに気がつきました。その人物は、頭を結い、不気味な眼差しをこちらへ向けています。口元には立派な鬚をたたえ、肩には刀で斬られたような傷がありました。体は男性の割りに小さく、透けていて、向かいの壁が見えています。武将のように見えます。

しばらく、その様子を茫然と眺めていると、武将の姿が少しずつ大きくなっていくのに気づきました。どうやら、武将はこちらへゆっくりと近づいてきているようです。敵を威嚇するように私をにらめつけながら、徐々に間合いをつめて来ます。あまりの形相に怖くて動けなくなりました。武将はなお、険しい形相になり、私の目の前に来たかと思うと、次の瞬間には跡かともなく消えてしまいました。

恐怖で動けなくなった体の緊張が取れ、良かったと安堵したその時、私の背後から、低い男の声で、
「……戦の準備はできたのか?」
と声をかけられ、気絶するかと思いました。今もあの武将は湯に浸かって、戦の準備をしているのかもしれません。

【実話恐怖体験談募集】あなたの実話恐怖体験談をお待ちしています。
実話恐怖体験談募集要項
実話恐怖体験談を投稿する

↑このページのトップへ