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室内に漂う人の気配

ペンネーム:OLさん


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私が以前勤めていた会社のビルは古いものでした。どれくらい古い建物なのかはわかりません。その会社の一室が私はひどく嫌いでした。何が出るとか、見えるわけではないのですが、居心地が悪いのです。たまに、そこでひとりで仕事をしていると、時折たくさんの人たちが部屋中を歩き回っているような妙な気配がするのです。顔を上げて周りを見渡しても誰もいません。いい気分のするものではなく、私はあまりその部屋へは近づかないようにしていました。

ある日、別の部屋で仕事をしていたのですが、会社の先輩に呼ばれてあの部屋へ行くことになりました。先輩は先に用があるというので、先にその部屋へ行ってしまい、後を追う形で私も例の部屋へ向いました。途中の薄暗い廊下が尚のこと恐怖心を煽ります。

部屋の前へ到着すると、人の話し声がしました。先輩以外にも誰かいるのか。私は人が多い方が怖さも減るだろうと、少し心が軽くなりました。見ると、ドアのすりガラスの向こうでは何人もの人たちが、忙しそうに動き回っています。楽しげにおしゃべりをしながら、たくさんの人たちが仕事をしている。それだけで、ホッとしました。

そして、私がその部屋のドアを開けると――誰もいなかったのです……。そんなはずはない。現にさっきまで――ドアを開けるまでは、すりガラスの向こうでたくさんの人が動き回っていたし、話し声まで聞いているのです。背中に嫌な汗が伝いました。

先輩にあとでこの話をしたのですが、先輩はトイレに行っていて部屋に入ってすらいなかったそうです。ああ、この部屋で感じた人の気配の正体って彼らだったのだなと、納得しました。だから、私はこの会社をやめました。

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