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待合ビル

ペンネーム:霊ちゃんさん


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バス停とバス停の丁度中間点に当たるところに、どうやらいまは使われていないビルがある。元はオフィスビルだったのか、なにかの事務所だったのかもしれない。

バスに乗りながらいつもそのビルを眺めるのだが、その開けた大窓にいつも人影がボーっと浮いている。予備校帰りのその時間に、まるで私を待っているかのようにいつも突っ立っているのだ。最初の内は掃除でもしているのかと思っていたのだが、どうもちがうらしい。まず、建物の電気を点けていない。それに、掃除をしているのであれば、ずっと同じ地点にいるというのも腑に落ちない。

あんな暗がりで一体なにをしているのだろうと、いつも不思議だった。例のビルに人影があるということに気づいて五日ほど経ったころ、ある異変に気づいた。それは、どうやら人影が二つになったようなのだ。いや、もしかすると初めから二人いたのかもしれない。ただ、あまりに暗かったし、私は常に最初に見つけた影に目を奪われていたから、それで気づかなかっただけなのかも。

それからというもの私はその二体の影を観察することが日課になった。最初に見つけた影は、体つきががっしりとしている印象を受けたので男性だろう。その彼と対になるように女のほっそりとした影が、窓辺にスーッと浮かび上がっているのだ。

二人は一体なにをしているのかわからない。相変らず暗闇の中窓辺の一点で差し向かい、身じろぎひとつしないのである。それから、数年時が経つ。私は久しぶりにそのバスに乗り、例のビルの前を通り過ぎる機会があった。やはり、そのビルは買い手がつかないのか、数年前のあの時のままにそこにそびえ立っていた。

ふとあの大窓を見ると、やはりいた。例の男の影だ!

しかし、あの女の影はどこにもなかった。彼は数年前と同じく、かつてそこにいたであろう彼女のほうを向いてじっとしている。私は好奇心に駆られてバスを途中で降り、そのビルの前まで戻ってみた。が、もうすでにあの男の影も経った数分の間にかき消えてしまった。

あれは幽霊だったのではないかと私はいつも思うのだ。あの男はいまもあの廃ビルで、女が帰って来るのを待っているのかもしれない。

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