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映画館の笑い声

ペンネーム:あいちゃんさん


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学生のころに体験したお話です。近所のお店でバイトをしている人と映画館へ行きました。普段は人気がなく、ガラガラな映画館なのですが、その日は盛況で、立ち見客が出るほど人がひしめいていました。ぐるりと辺りを見渡しましたが、暗い館内なのも相まって空いている席を見つけることができません。

しばらく、館内をうろうろしていると、怖気が走りました。何者かが私の身体に触れているのです。紛れもなくそいつは痴漢でした。

と、同時に耳のそばから聞こえる子供がふざけているような笑い声。私は性懲りもなく身体に触れている痴漢魔に、文句を言ってやろうと振りかえると、誰もいないのです。逃げたのかとも思ったのですが、通路にはそもそも人が通っておらず、走る音も聞こえません。そこで初めて、冷や汗が流れたのです。

それから程なくして、空いている席が見つかり腰かけたのですが、映画の合間合間から、出演者ではない子供の笑い声が、ずっと木霊していました。いま思うと、私の身体に触れていた手は、男の手というよりは、子供の小さな手だった気がするのです。いまでは、その映画館はなくなってしまったのですが、私はいまだにその周辺をひとりで歩けないのです。

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